Fable 5・Kimi K3・Grokを1つの画面で協働——プログラミングできない私がオーケストリオンシステムを自作した話

Claude(Fable 5)・Kimi K3・codex・gpt・Grok。5つの役割を持つAIチームが1つの画面の中で協働する、オーケストリオンシステムを作った。私はプログラミングができない。作り方は、AIに日本語で頼んだだけ。増えた費用はサブスク1本分で、追加のAPI課金はゼロ。この記事では、どうやって作ったかを失敗談も含めて書く。実際に使っている「AI同士を協働させる指示のひな形」は、記事の一番下にまとめて置いてあるので、先に見たい人はスクロールしてどうぞ。

何を作ったか

ひとことで言うと、「AIの分業チーム」。うちでは5つの役割に分けている。

  • Claude(Fable 5): リーダー役。段取りを決めて、他のAIに仕事を振って、納品物をチェックする
  • codex: プログラム実装の職人
  • Kimi K3: デザインの初稿づくり
  • gpt: ちょっとした相談相手
  • Grok: 外部の視点でのレビュー役

この5役が1つの画面の中に並んでいて、リーダーのClaudeが隣のAIに指示を出し、できあがった仕事を回収して、検品までする。人間の私がやるのは、最初の依頼と最後の確認だけ。マルチエージェントの専用製品みたいな響きだが、フレームワークの類は一切入れていない。あるのは、手元の画面と「協働のルール」だけ。

自作ターミナル「よりAI」の実際の画面。複数のペインにAIチームが並んで動いている(案件名などはマスキング)

実際の画面。案件名などはマスキングしています。

きっかけ: 月額アプリを買う寸前でやめた

発端は7月の頭。AIのターミナル(AIと対話する黒い画面)を仕事で何枚も開くようになって、画面がぐちゃぐちゃになった。それを整理できる海外製の月額アプリを見つけて、契約する寸前まで行った。

手が止まった理由はひとつ。うちはAI導入支援が商売で、「AIで作れる道具」を月額で買ったら説明がつかない。その場で社内ルールにした。「AIで自作できる領域のツールは、買わずに作る」。AIのサブスクにはお金を払う、道具は作る。この線引きは今も守っている。

どう作ったか: 日本語で頼んだだけ

先に言っておくと、私はこのアプリの中身のプログラミング言語を1行も書けない。書いたのは全部Claude Code(AnthropicのAI開発ツール)。

やったことは、本当にこれだけ。

  1. 「こういう画面で、こういうことができる道具がほしい」を日本語の文章にして渡す
  2. 翌日にはたたき台が動くので、実際に仕事で使ってみる
  3. 使いにくいところ・エラーが出たところを、そのまま日本語で伝えて直してもらう

設計の相談を始めたのが7月8日。翌日に実装、3日目の朝には実物で仕事を始めていた。プログラミングの知識の代わりに必要だったのは、「何がほしいかを言葉にすること」と「できあがったものを実際に使って確かめること」。この2つは発注者の仕事であって、エンジニアの仕事ではない。つまり、誰でもできる。

失敗も全部、AIと一緒に直した

順調な話だけ書くとウソになるので、失敗も書いておく。使い始めてから事故が2つ出た。

1つ目は、ログイン情報が消える事故。複数のAIが同じ設定置き場を見ていて、新しい画面でログインしたら元のログインが上書きされた。2つ目は、「作り直したのに中身が空っぽ」という事故。作業は正常に終わったように見えるのに、できあがった実物が動かない。

どちらも、直し方は同じだった。エラー画面や症状をそのままAIに見せて、「これ何が起きてる?」と聞く。原因の切り分けと対策はAIが考えて、私は「その直し方でいこう」と決めるだけ。この2つの事故から学んだのは技術ではなくて、「AIの『できました』を、実物で確かめてから信じる」という習慣だった。今はチェックの仕方まで最初にAIと決めておくので、同じ種類の手戻りは消えた。

AIがAIに仕事を振る

この仕組みの本命がここ。リーダーのClaudeが、隣の画面のcodexやKimi K3に指示を出して、結果を回収する。

ただし、AI同士を繋ぐだけでは仕事にならない。効いたのは「協働のルール」を文章で決めたことだった。うちでは、AIに仕事を振る時の指示は必ず5つの要素で書くと決めている。ゴール、材料の場所、やってはいけないこと、終わったらどう報告するか、そして合格の条件。この5つが揃っていない指示は、人間相手でもAI相手でも、だいたい事故る。

面白かったのは、「どのAIにどの仕事を振るか」を決めるためにやった実験。同じ課題を2つのAIに同時にやらせて、どちらが作ったか分からない状態にして、第三者のAIに審査させた。初戦はcodexの3勝0敗。ところが別の課題で再戦したら今度は逆転で、通算1勝1敗。それ以来、「このAIが最強」と決めつけるのをやめて、種目ごとの対戦表を付けて更新し続けている。AIの世界は毎月順位が入れ替わるので、これが一番現実的だった。

ついでに言うと、この「協働のルール」の改訂版は、AIチーム自身に相互レビューさせて作った。AIが守るルールをAIに書かせて、別のAIに粗探しをさせる。人間の私がやったのは最後の裁定だけ。

かかったお金の話

一番聞かれそうな話。この仕組みで増えた費用は、Kimiのサブスク1本分だけ。

それぞれのAIは各社のサブスク(定額プラン)の範囲内で動いていて、従量課金のAPI料金は1円もかかっていない。道具そのものは自作なので、月額アプリ代もゼロ。導入時にひとつだけ学びがあって、同じ名前のAIツールでも「公式版はサブスクで動くが、非公式版は従量課金でしか動かない」ということがある。導入前に確認するのは機能ではなく、課金の経路。ここだけは覚えておいて損がない。

まとめ: 道具は「買う」から「AIに作ってもらう」へ

2週間前の私は、月額アプリの契約画面を開いていた。今は、自分の業務に合わせて毎日進化する自作の道具で仕事をしている。プログラミングは今もできないままで、それで何も困っていない。

マルチエージェントというと大掛かりに聞こえるが、実際に必要だったのは高い製品ではなくて、「AIへの頼み方」と「協働のルール」だけだった。そしてそれは文章なので、誰でも書ける。下に、うちで実際に使っているひな形を置いておく。

おまけ: この道具、使ってみたい方はいますか

この自作ターミナルには「よりAI(よりあい)」という名前を付けた。AIたちが集まる寄合所、という意味。いまは社内専用の道具だが、「使ってみたい」という声が多ければ、製品(月額サービス)として出すことも考えている。いま動いている主な機能はこのあたり。

  • AIとの対話画面を最大8枚、1つのウィンドウに並べて同時に動かせる
  • 仕事ごとの作業場所を覚えていて、1クリックで該当の画面が開く
  • 画面ごとに別のアカウントへ切り替えられる
  • 各契約の使用量と回復時刻がひと目で分かるメーター付き
  • AI同士が仕事を振り合うための連絡通路を内蔵(この記事の本命機能)

気になる方はお問い合わせから「よりAI」と一言だけでも送ってもらえたらうれしい。声の数で判断します。

付録: 実際に使っているプロンプト集

コピーして、自分の業務の言葉に置き換えて使ってください。ターミナルの自作部分の詳細は企業秘密として伏せますが、うちではこの「頼み方」と「協働ルール」を整えただけで、AIとの仕事の精度が目に見えて変わりました。

1. まずはここから: AIに道具づくりを相談する頼み方

Claude Code(または普段使っているAI)に、こんな形で投げるところから始まります。専門用語は不要です。

私は[職業・業種]で、[困りごと]に毎日[時間]かかっています。
これを楽にする小さな道具を作りたいです。
・毎日やっている手順: [箇条書きで具体的に]
・できあがりのイメージ: [画面で何が見えて、何ができればOKか]
・私はプログラミングができないので、専門用語を使わず説明しながら進めてください。
まず、どんな作り方の選択肢があるか、簡単な順に3つ提案してください。

2. AIに仕事を振る時の指示テンプレ(5要素)

うちのAIチームで毎日使っている指示のひな形です。人間のスタッフへの依頼にもそのまま使えます。

【依頼】
背景とゴール: ○○のため、△△が□□になったら完成。
材料: [参考にしてほしい資料・ファイル・URL]
やってはいけないこと: 頼んだ範囲の外を勝手に変えない。
完了報告: 終わったら「完了」と一言+できたものの場所を教えて。
        できなかった場合は、どこまでやれたかと理由を教えて。
合格条件: (1)○○が確認できる (2)△△が□個ある (3)誤字がない

ポイントは最後の「合格条件」。これを先に決めておくと、AIの「できました」を鵜呑みにせず、確かめる基準が手に入ります。

3. エラーや不具合が出た時の聞き方

さっき作ってもらった[道具名]でエラーが出ました。
画面に出ている文章: [エラー文をそのまま貼る。スクリーンショットでも可]
やろうとしていたこと: [操作の内容]
何が起きているのか、素人向けに説明してください。
そのうえで、直す方法を安全な順に提案してください。

4. AI同士を競わせて、任せ先を決める方法

複数のAIを契約している人向け。「どのAIにどの仕事を任せるか」を感覚ではなく実測で決められます。

これから同じ課題を2つのAIにやらせた結果を渡します。
どちらが作ったかは伏せます。次の3つの観点で採点し、
それぞれ理由付きで勝敗を判定してください。
(1)頼んだ内容を全部満たしているか
(2)仕上がりの質
(3)手直しにかかりそうな手間
課題: [依頼文を貼る]
作品A: [1つ目の成果物]
作品B: [2つ目の成果物]

コツは、審査するAIには作らせないこと(作った本人は身内びいきします)。勝敗は1回で決めつけず、種目ごとに記録して更新し続けるのがおすすめです。

5. 協働ルールをAI自身に点検させる

これはうちのAIチームの協働ルールです: [ルールを貼る]
あなたがこのルールで働く側だとして、
(1)曖昧で判断に迷う箇所 (2)抜け穴になりそうな箇所 (3)無駄な手間になっている箇所
を、それぞれ具体的な改善案付きで指摘してください。

6. オーケストリオンシステムそのものを組み始めるプロンプト

「複数のAIを契約して、チームとして協働させたい」という段階まで来た方向け。司令塔にするAI(うちはClaude)に、チームの協働ルールづくりから任せるプロンプトです。

複数のAIを私1人で運用する「AIチーム」を作ります。
チーム構成(例。自分の契約に合わせて書き換えてください):
・司令塔: 段取り・指示出し・検品・最終判断
・実装担当 ・デザイン担当 ・相談相手 ・レビュー担当

あなたにはこのチームの「協働ルール」を1枚の文書として作ってほしい。
必ず含める内容:
1. 役割分担表(各AIの担当と、任せてはいけない仕事)
2. 仕事を振る時の指示の型(ゴール/材料/禁止事項/完了報告/合格条件の5要素)
3. 完了報告の形式(できた・できなかったが一目で分かる形に)
4. 検品の手順(「できました」を鵜呑みにせず確かめる方法)
5. 不合格だった時のやり直しの手順
6. 記録簿(誰に何を頼んで、結果どうだったかの記録の形)

できあがったら、このルールで働く側のAIの立場から
「迷いそうな箇所」「ズルできそうな箇所」を自分で指摘して、
直した改訂版まで出してください。

うちの5役体制もこの1枚から始まって、運用しながら育てている。できあがったルールを5番のプロンプトで別のAIに点検させると、さらに固くなります。

この記事で書いた「AIに仕事を任せて、実物で確かめる」仕組みづくりは、うちが顧客企業に提供しているAI活用支援AI組織化でやっていることの縮図でもある。自社で毎日回している仕組みなので、導入時のつまずきポイントまで含めて案内できる。「うちの業務ならどこから始めるべき?」という段階の相談も歓迎です。

Contact

この記事の内容について相談したい方へ

記事の内容に関連するご相談、お気軽にどうぞ。
現状をお聞きして、最短ルートをご提案します。

お問い合わせ