うちは社長1人と社員1名、2人だけの小さな会社。そんな規模で、AIに"部署"を作った。秘書がいて、HP事業部がいて、SNS担当がいる。全部Claude Code。何が変わったのか、正直に書いてみます。
AIを入れる前の、うちの「困ってた」こと
困っていたというより、詰まっていた。
HPの更新、SNSの投稿、見積書の作成、打ち合わせの議事録。どれもたいして難しい作業ではないけれど、全部が自分の上に積み重なっていた。「今日はHP更新の日」と決めたのに、朝から電話が3本入って、午後は別の案件の対応で、結局HP更新は翌日に持ち越し。そういうことが毎週起きていた。
ChatGPTは使っていた。文章の壁打ちや調べもの程度には便利だった。Memory機能で前回の会話を覚えてくれることもあるけれど、自社のトーン、判断基準、過去の決定事項をファイルとして体系的に持たせて、毎セッション読み込ませる——そこまでの仕組みは作れなかった。便利な道具ではあったけど、「うちのことを深く理解した存在」にはどうしても届かない感覚があった。
似たような感覚、ある人もいるんじゃないかな。「AIって便利そうなのに、なんか使い倒せてる気がしない」という感じ。うちもずっとそこにいた。
そのうちに「毎回説明しなくていいAIの使い方があるんじゃないか」と考え始めた。
Claude Codeを選んだ理由と、最初の1週間
最初にClaude Codeに触れたのは、開発作業の補助として使ってみたのがきっかけだった。コードを書いてもらうというより、「この処理どう設計するか」を話し合う相手として。そこで気づいたのが、ルールファイルとメモリの仕組みだった。
「このAIは、設定を書いておけば次回から読んでくれる」
それだけで、ChatGPTとの違いが明確になった。
決め手になったのはもう1つ、MCPという仕組みでGoogle Workspace、Notion、Canvaと連携できる点だった。うちはすでにNotionで情報管理、Googleで日程とドキュメント、CanvaでSNS素材を作っている。それらをAIが直接読み書きできるなら、「AIに指示して、Notionに書いておいて」が成立する。
最初の1週間は、正直に言うと壁打ち程度だった。「このメールの返信、どう書く?」「このページの構成、意見ちょうだい」くらいのことしかやっていない。ただ、使いながら少しずつ「ルールファイル」という概念を理解し始めた。AIに人格と判断基準を与えられる、ということに気づいたのがこの時期だった。
もしこれを読んでる方が今ちょうどその「壁打ち止まり」の段階にいるなら、あと一歩だけ踏み込んでみるといいと思う。ここから先が、ただの道具じゃなくなる境目だった。
「社員みたいに使う」ってどういうことか
単純に「何でもやらせる」ではない。
そもそも、人を雇っても同じことが必要だと思う。その人が何を得意としていて、どんなトーンで話すのか、判断に迷ったときどこに確認するのか。それを最初に決めておかないと、仕事を任せることができない。AIも同じだった。
具体的にやったのは3つ。
ペルソナを与える
このAIは誰なのか、どんな口調で話し、何を大事にするのかを文章で書いた。「丁寧だけど正直。ダメなものはダメと言う。ただし代替案をセットで出す。」みたいなことを、実際に文章で定義した。
ルールを作る
何をやっていいか、何は絶対にやらないか。「景品表示法上NG表現は自分でチェックして指摘する」「コード全文を貼らない」「わからないことは憶測で進めない」。社内ルールを文書化する感覚で書いた。
メモリを持たせる
自社の事業内容、顧客像、過去の判断事例、決定した方針。これをファイルで管理して、AIが毎回読み込む仕組みを作った。「前回決めたこと」が引き継がれる。
これで「引き継ぎ」が成立した。新しいセッションを始めても、AIは前回の続きから動ける。ここが一番大きかった。
さらに、構造を階層にした。秘書がいて、その下にHP事業部長、SNS担当、開発担当がいる。社長(自分)が秘書に指示する。秘書が判断して各担当に振る。各担当が動いて、成果を秘書経由で報告する。そういう組織の動きをAIで再現した。
「AIっぽさ」を消したかった。最初のうち、AIが出してくるテキストはどこか整いすぎていて、自分の文章の感じと違った。ペルソナとルールを細かく書いていくうちに、少しずつ「うちのAI」みたいなトーンになっていった。
ここまで読んでくれてる方、この3ステップ自体は別に難しいものじゃない。ファイルを書いてAIに読ませるだけ。ただ「何を書くか」に少し頭を使う。次の記事でその中身を具体的に書くつもりなので、よければ続きも読んでみてほしい。
今日はサンプル建設株式会社(仮)さんのHP更新、何からやればいい?
おはよう。最終更新が先月だから、まずニュースと実績追記から始めるのがいいかも。HP事業部長起動しようか?
お願い
了解、瀬川さんに確認してくるね
呼ばれました。サンプル建設株式会社(仮)さんの現状HPを確認します。既存の works ページに施工実績3件を追加、ニュースに季節のお知らせを1本、という構成でどうでしょう。
実際に任せている仕事と、まだ任せられない仕事
丸投げではない、というのを先に書いておきたい。
任せているもの
HPのページ構成案を出してもらう。「このサービスページ、もう少しCV導線を強くしたい」と伝えると、現状の構成の問題点と改案を返してくる。そのままは使わないが、叩き台として十分使える。
ブログ記事のドラフトも任せる。この記事もそうだ。大きな目次と要点を伝えて、初稿を出してもらう。それを自分で読んで、「ここの言い回しが違う」「この部分はもっと正直に書く」と直していく。
SEOチェック、SNS台本の初稿、データ分析の一次処理。どれも「最初の作業」の部分を任せることで、自分のやることが「判断」と「最終調整」に絞られる。
任せられないもの
最終的な品質判断は自分でする。AIが「これでいい」と言っても、自分が読んで「なんか違う」と感じたら直す。その感覚をAIに説明しきるのが難しい部分もある。
対人交渉は当然AIでは無理だし、クリエイティブの最終ジャッジも自分がやる。「このデザイン、かっこいいか」という判断はAIに頼めない。
あと、新しい判断が必要な場面。「今まで誰にも聞いたことがないこと」に対して、AIは過去の知識から類推して答えを出す。それが合っているかどうかは、やはり自分が判断しなければならない。
うちはこの「任せる/任せない」の線引きを最初に決めたことで、かえってAIをちゃんと使えるようになった気がする。あなたの仕事でも、どこが「叩き台でいいもの」でどこが「最終判断が必要なもの」か、一度整理してみると使い方が変わるかもしれない。
セキュリティと情報漏洩への向き合い方
「AIに社内情報を入れていいのか」という質問は、必ずある。
正直に言うと、完璧な答えはない。ただ、向き合い方は整理できる。
Anthropic(Claude Codeを作っている会社)のAPI経由での利用、つまり商用契約(Commercial Terms)に基づく利用では、入力データ・出力データがAIモデルの学習に使用されないことが公式に明記されている。これは Anthropic の商用規約 Section B で明確に禁止されている条項。(出典: Anthropic Commercial Terms of Service、2026年4月時点)
念のためにもう一つ書いておくと、無料版のChatGPTやClaudeの「AIチャット」は設定次第で学習利用されるケースがある。API経由の利用は別枠、と理解しておいて良い。
これはサービス規約上の話なので、実際にどこまで信頼するかは各社の判断になる。
うちがやっていることは2つ。
機密情報を分けて管理する: 顧客の個人情報や契約詳細は、AIに渡すファイルから意識して除外している。「これはAIに見せていい情報か」を1行考える習慣をつけた。
APIキーと認証情報はコードに書かない: 開発作業でAIを使う際、APIキーや認証情報はコード内に書かせない。環境変数で管理するルールを徹底している。
「完璧に安全」とは言い切れない。でも「どのリスクをどこまで受け入れるか」を自分で把握した上で使っている、というのが実態だ。組織として使う場合は、社内でのガイドライン設計がそこの第一歩になる。
情報管理の不安は、多くの場合「何が問題になるか整理されていない」ことから来る気がする。無料の無料AIチャットをなんとなく使うより、API契約で明確な利用条件の下で使う方が、むしろ安心して使えることも多い。
1人社長が"AI組織"を持って変わったこと
一番変わったのは、意思決定のスピードだった。
以前なら半日かかっていたことがある。「この新しいサービスをどう打ち出すか」を考える時間。競合を調べて、自社の強みを整理して、ターゲットを考えて、ページ構成を考えて。それが今は、AIと30分話すと「叩き台」ができている。残りの時間は叩き台をどう直すかだけを考えればいい。
「1人だけど組織的に動ける」という感覚が生まれた。これが地味に大きい。
以前は、何かをやろうとするたびに「自分がやらなきゃ」という重さがあった。今は「AIに初稿出してもらって、自分は判断だけする」という流れができていて、頭の中の整理がしやすくなった。
ただ、正直に書いておきたいことがある。使いこなすまでに、それなりの学習コストがかかった。ルールファイルの書き方、ペルソナの設計、MCPの設定。これを自分で調べて、試して、うまく動かなくて調整して。最初の2週間は「便利さ」より「セットアップ」の時間の方が長かった。
でも、それをやったことで「自分の会社のAI」ができた。毎回ゼロから説明する道具ではなく、うちのことを知っている仕組みとして動いている。その差は大きい。
同じ規模の会社を経営してる方や、一人で複数の仕事を回してる方には、試してみる価値があると思っている。セットアップのコストを含めても、うちの場合は元が取れた。まずは1つの定型作業だけでもAIに任せてみるところから始めてみてほしい。
よくある質問
AIに「部署を作る」って、具体的にどうやるの?
Claude Codeの「サブエージェント」機能を使います。役割ごとに別の人格・ルール・専門領域を定義した設定ファイルを作り、必要な場面で呼び出すことで、1人の社長から複数の「部署担当AI」を起動できます。FlatWorksでは秘書・HP事業部・SNS事業部・情報収集部など10部署以上を運用しています。各部署はそれぞれの専門性に基づいて応答するため、汎用AIに毎回背景を説明する必要がなくなります。
CLAUDE.md って何?最初に何を書けばいい?
CLAUDE.mdは、Claude Codeがセッションをまたいで読み込む設定ファイルです。プロジェクトのルートに置くと、毎回の会話開始時に自動で読み込まれます。最初に書くべきは、(1)会社・事業の概要、(2)使ってほしい言葉づかい・口調、(3)避けてほしいこと(NG事項)、(4)よく使うファイルやディレクトリの場所、の4点です。完璧を目指さず、運用しながら追記していく形で十分機能します。
うちみたいな小さい会社でも導入できる?必要な前提は?
社長1人〜数名規模こそ向いています。FlatWorks自身が社長1人+外部スタッフ数名の構成で運用しており、むしろ意思決定が早いぶん導入は早いです。必要な前提は、(1)Claude Pro以上のプラン契約(月$20)、(2)PC(Mac/Windows/Linux問わず)、(3)テキストファイルを編集する基本操作、の3つです。プログラミング経験は必須ではなく、業務を言葉で整理できれば導入可能です。
月額いくらかかる?費用対効果はどれくらい?
個人運用の場合、Claude Pro(月$20、約3,000円)から始められます。本格運用ではClaude Max 5x(月$100)以上を推奨します。FlatWorksの実績では、外注していた制作の下書き工程・調査作業・資料作成の初稿作成などをAIに任せることで、月20〜40時間相当の業務時間を圧縮できています。時給換算で考えると、$20プランでも初月から元が取れるケースが多いです。
AIに任せて事故らないか不安。どう運用してる?
FlatWorksでは「AIには初稿を作らせる、最終判断は人間」というルールを徹底しています。具体的には、(1)本番デプロイ・課金・データ削除など影響の大きい操作は必ず人間が確認、(2)個人情報・APIキーはCLAUDE.mdや.gitignoreで除外、(3)監査部AIが定期的にコード品質をチェック、という3層体制です。AIを「優秀な部下」と捉え、最終承認だけは社長が握る運用が安心です。
何から始めればいい?最初の1週間でやることは?
おすすめの順序は、(1)1〜2日目:Claude Pro契約+Claude Code インストール、(2)3〜4日目:CLAUDE.mdに会社概要と「秘書役」の人格を1つだけ書く、(3)5〜6日目:いつもやってる定型業務(メール返信案・SNS投稿案・議事録要約など)を1つだけAIに任せてみる、(4)7日目:うまくいったこと・違和感をCLAUDE.mdに追記、です。最初から10部署作ろうとせず、1部署をしっかり育てるのがコツです。
※ 本記事の内容は2026年4月時点のAnthropic公式規約に基づきます。最新の規約は Anthropic Commercial Terms of Service および Anthropic Privacy Center でご確認ください。
